NO.795761 ・エースさん(男性/99歳) 2012/09/28 13:48:26
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『変身』などで知られる作家フランツ・カフカは極端なマイナス思考の持ち主だったらしい。 『絶望名人カフカの人生論』(飛鳥新社刊)に教わった。
<将来に向かって歩くことは、ぼくにはできません。将来に向かってつまづくこと、これはできます。いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです>(フェリーツェへの手紙より)。 絶望もここまで行くと、親しみを覚えるからふしぎだ。
編訳者の頭木(かしらぎ)弘樹さん自身、難病で入退院を繰り返した時期は、周囲の励ましより「ダメ人間」カフカに救われたそうだ。
文豪と称されたのは死後のことで長編小説はすべて未完。 結婚も望んだのにできなかった。 何一つ成さずに後ろばかり見ていた40年の生涯。 でも、カフカは自殺だけはしなかった。 <倒れたまま>でいたからかもしれない。
絶望の岸辺にはほんの少し、体を横たえる場所がある。 暴力や中傷に耐えかねて、生きるのも嫌と思ったときは、どうかそこに倒れてくれないか。 前を向けないと自分を責めてはいけない。 後ろを向けば、君が死んだら悲しむ家族や友達の顔が見えてくるはずだから。
―2012.9.9 読売新聞 編集手帳より全文― |