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投稿情報 | 内容 |
NO.791725 エースさん(男性/99歳) 2012/08/28 23:47:45 |
釈尊が、托鉢の道中でのことである。 大きな橋の上で、辺りをはばかりながら一人の娘がたもとへ石を入れている。 自殺の準備に違いない。 娘のそばまで行かれた釈尊は、優しくその訳を尋ねられた。 相手がお釈迦さまと分かった娘は、心を開いて苦しみの全てを打ち明けた。 「お恥ずかしいことですが、私はある人を愛しましたが、捨てられてしまいました。 世間の目は冷たく、やがて生まれてくるお腹の子供の将来などを考えますと、いっそ死んだ方がどんなにましだろうと苦しみます。 こんな私を哀れに思われましたら、どうかこのまま死なせてくださいませ」 と、よよと泣き崩れた。 釈尊は哀れに思われ、こう諭された。 「不憫なそなたには、例えをもって話そう。 ある所に、毎日、荷物を満載した車を、朝から晩まで引かねばならぬ牛がいた。 つくづくその牛は思ったのだ。 『なぜオレは、毎日こんなに苦しまねばならぬのか、一体自分を苦しめているものは何なのか』 そして『そうだ。オレを苦しめているのは間違いなくこの車だ。 この車さえなければ、オレは苦しまなくてもよいのだ。この車を壊そう』 牛はそう決意した。 ある日、猛然と走って大きな石に車を打ち当て、木っ端微塵に壊してしまったのだ。 それを知った飼い主は驚いた。 こんな乱暴な牛には、余程頑丈な車でなければ、また壊される。 やがて飼い主は、鋼鉄製の車を造ってきた。 それは今までの車の何十倍の重さであった。 その車に満載した重荷を、今までのように毎日引かせられ、以前の何百倍も苦しむようになった牛は、今更壊すこともできず、深く後悔したが、後の祭りであった。 牛は、自分を苦しめているのは車だと考え、この車さえ壊せば、自分は苦しまなくてもよいのだと思った。 それと同じように、そなたはこの肉体さえ壊せば、苦しみから解放され、楽になれると思っているのだろう。 そなたには分からないだろうが、死ねばもっと恐ろしい苦しみの世界へ入っていかねばならないのだよ。 その苦しみは、この世のどんな苦しみよりも、大きくて深い苦しみである。 そなたは、その一大事の後生を知らないのだ」 そして釈尊は、全ての人に、後生の一大事のあることを諄々と教えられた。 娘は、自分の愚かな考えを深く後悔し、釈尊の教えを真剣に聞くようになり、幸せな生涯を生き抜いたという。 |
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